イタリア自動車見聞録2002(4)
●モストラスカンビオ
イタリアでは、モストラスカンビオと呼ばれる自動車・バイクに関する品物ばかりの蚤の市のようなものが、全国各地で定期的にひらかれています。 日本には同様のものはありませんが、雰囲気としては骨董市のようなものです。 ミラノではリナーテ空港の近くに会場が設けられており、私はそこに行ってきました。 屋内と屋外の両方に出店されているのですが、あいにくの雨で屋外の店を見ることはほとんどできませんでした。
車とバイクに関するものならありとあらゆる物が売られています。 パーツはもちろん、書籍、カタログ、ポスター、アクセサリーなどなど。 業者による出店も少なくありませんが、ほとんどの店主はコレクターのようでした。 店舗はあるのか?と聞くと名刺はくれるのですが、しかしこれは店ではなくて家なので来てもらっても困る、と言うのです。 保存状態が良くないものも目立ち、ほこりまみれの場合も多いので、カタログなどを物色しているとすぐに手が真っ黒になってしまいました。 それにしても彼らが普段これだけの量をどこに置いているのか不思議です。
最近のモデルのパーツは見当たらず(ディーラーに行けば売っているので当然ですが)、店頭に並んでいるのは古めのものがほとんどでした。 キャブレター専門、あるいはヘッドライト専門という店もあり、とにかく会場を回っているだけでも飽きません。 昔、荷物を革のトランクに詰めて車に積んでいた時代の、レトロなトランクばかりの店というのもあってびっくりしました。 右下の画像はそのトランクの中でも、ピクニックセットが収められたトランクやバスケットです。来場者の年齢層はというと、おじさんやおじいさんがほとんどで、若い人が少なかったことが意外でした。 20代の人はまず見かけません。 イタリアでは車趣味というものが、大人の楽しみなのだと改めて感じました。 若いうちは収入が少ないのでそんなことをする余裕が無いとも考えられますが、若者全体の傾向として車を趣味とする人が減ってきているのかもしれません。 会場では、新婚旅行かと思われる日本人カップルを見かけましたが、周りはラフな服装でバイクのホイールを肩からかついでいるようなマニアックなおじさんばかりなので、こぎれいな身なりで寄り添って歩く2人は周囲からの注目を浴びていました。 これからモストラスカンビオに行ってみようと思う方には、ぜひマニアックなよそおいをおすすめします。
●自動車博物館
トリノにある自動車博物館を訪れました。 ミラノ郊外のアレーゼにあるアルファロメオミュージアムはアルファロメオ社が所有しているものですが、こちらは正式名称をカルロ・ビスカレッティ自動車博物館というように、カルロさんのプライベートコレクションが展示されている館のようです。 展示内容の充実度という点では比肩するものは無いと思われるのですが、所蔵品はクラシックカーを中心に60年代のモデルまでとなっており、70年代以降のモデルはほとんど展示されていないので、近年のモデルが好きな人は物足りなさを感じるかもしれません。 ロードカーに関しては世界各国のモデルが集められており、レーシングカーではイタリア車が中心となっています。 興味深い展示としては、アルファロメオジュリエッタの木型(1954年)や、実物を並べる形で表したタイヤの歴史といったものがありました。 私が特に感激したのが、アルファロメオジュリエッタシリーズ、レーシングカーであるランチアD24、それからフェラーリF40やF50を間近で心ゆくまで鑑賞できたことも忘れられません。 館内ではビデオ上映(もちろんイタリア語ですが)も行われていました。
展示車両の数がとにかく多いので、のんびり見ているとおそろしく時間がかかってしまいます。 どの年代をじっくり見るかをあらかじめ決める方がよいでしょう。 館内にはこぢんまりしたバールがありますので、疲れたら一息つくこともできます。この自動車博物館は、ポー川に沿った大きな道に面しているのですが、ここまで来たらぜひポー川沿いの公園や河原を散策することをおすすめします。 古城も点在するポー川一帯の優美なたたずまいは、自動車工業の街トリノの別の側面を伝えてくれるでしょう。 自動車博物館の近くにはフィアット歴史館というのもあるのですが、残念ながら今回そちらへは行くことができませんでした。
●番外編 : ピニンファリーナ通りとヴィンチェンゾ・ランチア通り
トリノの街にはフィアットやランチアの本社だけでなく、ピニンファリーナやベルトーネなどカロッツェリアもたくさんあります。 ピニンファリーナ社の前の道はピニンファリーナ通り、ランチア社の前の道はランチア通りという名前がついています。 そういえば日本でも会社名がそのまま町の名前になっていたりするところもありますね。